立川の家 (2024年)

 周辺に住宅が建て込んでいる敷地は都心や郊外でも一般的です。本敷地もそういった環境にあり、面積は115.71㎡で許容建ぺい率と容積率がそれぞれ40%、80%であり、できるだけ大きく作るために隣地との関係を考慮せず既設の隣家の窓を塞ぐことになりかねません。それを避けるための建物の配置がおおよそ決まりました。さらに敷地の特徴として隣の分譲地に1本の路地が長く通っていましたので、そこに焦点を合わせて家の中に軸線を定め、視線が抜ける廊下を作ることにしました。また、容積率を最大限とっても延べ面積は92㎡ですから標準的ないわゆる3LDKという規模であり、一つ一つの部屋が小さく孤立した住宅になるところをスキップフロア(階が半分の高さでずれているつくり)とし、空間同士がつながっていることで面積以上に広く感じられるようにしました。リビングとダイニングキッチンだけでなく更に上の空間や畳の小上がりの部屋が少しずつつながっていて家族の誰がどこにいても気配が感じられます。敷地には高さの制限もあり十分な高さが確保できないため屋根の勾配に合わせて室内も勾配天井として広がりをもたらしています。建物の中心に玄関につながるスケルトン階段を配置することで専用廊下を設けず踊り場も有効に室内として利用しています。

 またプライバシーに対する配慮のため平面形に凹部を2箇所設け、道路や隣地に面する外壁の窓は極力小さくして、凹部に対して窓を大きく設置して自然光を採り明るく開放的な家になりました。同時に隣地境界からの離隔距離を確保しています。

 敷地選定に協力してくれた施工会社に施工が決まっている条件下で、施工会社の得意とする構法や材料を理解した上で標準仕様の材料を尊重しつつ部分的に味のある左官壁(シラス壁)を使い、あるいは将来子供部屋となる予定の部屋は石膏ボードに仕上げをせず将来に託す形など工夫し坪単価は100万円を下回る(税込)ローコストが実現しています。 

project data

  • 敷地  :東京都立川市
  • 主要用途:住宅
  • 敷地面積:115.7 ㎡(35.0坪)
  • 建築面積:45.9 ㎡(13.9坪)
  • 延べ面積:87.3 ㎡(26.4坪)
  • 構造  :木造
  • 建築主 :個人
  • 施工  :株式会社 小嶋工務店