那須塩原の家 (2023年)

 この家は当設計事務所として第一号の住宅です。建築主は当事務所主宰の近藤です。それまでは生活の拠点を東京においていましたが、いわゆる2拠点生活を実験的に実行してみました。正直をいうと長年訪れてみたかったフィンランドの建築家アルバ・アアルトの自邸を2019年に訪れた際に感じた心地よさに感銘を受けて自邸を作りたくなったのです。その構想のもと敷地を探していましたが、ご縁があって周囲が林の分譲地に巡り合いました。周辺には赤松が残る雰囲気がフィンランドを彷彿とさせていました。190坪(約600㎡)はなかなか広いのですが、最初に行ったスタディ(検討)はアアルトの自邸のコピーを同じ縮尺にして置いてみました。結構ギリギリでしたので身の丈にあった大きさにし、リビングと庭につながる窓周りのイメージを大切にして設計を進めました。初心に帰って尊敬する吉村順三先生の自邸や軽井沢の別荘も同じく同じ縮尺を横に置いてあれこれ考えて設計を進めました。それらを穴の開くほど眺めつつ手を動かしてみると今まで気づかなかった吉村先生のお考えが見えてくる気がした貴重な経験をしました。

(アアルト自邸2019年近藤撮影)

 建築家の自邸は実験的なことにチャレンジすることが多いのですが、冒頭に書いたようにアアルトの自邸(吉村先生もそうですが)のように自然体で心地よく無駄のない動線というお手本を目指したので、私も肩の力を抜いて設計できました。在来木造で必要な壁や梁をしっかり入れ、庭とのつながりや部屋同士が見えがくれすること、どこからも必ず外の緑が見えることなどにこだわりました。以前から考えていたエアコンの風による空調ではなく原則温冷熱ヒーターによる輻射冷暖房、冬の暖房は薪ストーブをメインにすることで穏やかな温熱環境を実現できました。輻射冷暖房を補完するようにエアコンも1台設置(ベースの冷房用に家の一番高いところに目立たないように)し、大きな窓のコールドドラフト対策の窓下のヒーターも仕込んでおいて、状況に応じて自分の感覚を信じてそれらを使い分けたり同時に使うことで快適な環境を生み出しています。

 肩の力を抜きつつも色々と試行錯誤をしながら進めた住宅なので現場段階でも自問自答したり大工さんに伝えたりしたスケッチも随分描きました。

(那須塩原の家スタディ模型)

project data

  • 敷地  :栃木県那須塩原市
  • 主要用途住宅
  • 敷地面積605.5 ㎡(183.2坪)
  • 建築面積97.5 ㎡(29.5坪)
  • 延べ面積129.5 ㎡(39.2坪)
  • 構造  木造
  • 建築主 個人
  • 施工  :株式会社 益徳工務店